15の評価ポイント
治水:水害から住民の命を守る事業といえるか?
- 川棚川水系の治水計画の目標400mm/24hを超える大雨が発生した場合でも、石木ダムで住民の命が守られるか
- 石木ダムの必要性は、
- 確率規模1/100(「100年に一度」)の降雨があると川棚川本川下流の「山道橋」地点に1400㎥/秒の洪水が流れてくる(計画上の洪水流量)
- 川棚川支川の石木川に建設する石木ダムは、230㎥/秒の洪水をカットする機能がある(ダムの効果)という計算を前提としている。
- 治水計画の根本にかかわる下記疑問点の解明
- 疑問1 昭和22年から昭和60年まで、川棚川流域内に雨量計が存在しなかったことから、川棚雨量を佐世保雨量×0.94と設定して計画流量を計算しているが、実際は流域内に雨量計はあり、データも存在していた。治水計画の根本である計画雨量算定過程に疑義がある。
- 疑問2 計画流量は、雨量から流量を算出する「流出計算モデル」をもとに算出されているが、このモデルの再現性について、石木ダム地点での検証がされておらず、再現性が適切に検証できていないのではないか。
- 疑問3 流出計算の過程を示すハイドログラフ(流量一時刻図)において、山道橋地点と石木ダム地点の洪水到達時間が異なっているのに、洪水ピーク時刻」が同一なのは不可解である。ダムの効果に疑義が生じる。
- 疑問4 洪水流量を算定する際に設定された小流域ごとのハイエトグラフ(雨量一時刻図)が仮に、小流域ごとに降雨パターンを与えず、一様に佐世保観測所で観測されたのと同じ降雨パターン(計画降雨ハイエト)を与えているとすると(県に問い合わせているが未回答)実態と乖離した降雨を前提に計算されたことになり、ダムの効果が過大に算出されている可能性がある。
- 疑問5 川棚川水系の河川整備計画において、計画の日標が石木川合流地点(下流から約2km)を境に上流では1/30、下流では1/100とされているため、1/100の降雨があると上流で氾濫することになる。この氾濫による洪水量の減少が、計画流量の計算において考慮されておらず、計画流量が過大に算出されている可能性がある。
利水:持続可能な水道を確保できるか?
- 石木ダムの必要f性は、
- 現在70,000㎥日である水道使用量のピークが、将来、100,000㎥日以上に増大する(水需要予測)
- 水需要をまかなう水源は、77,000㎥日しかない(保有水源)という前提にたっており、これら前提に関する下記疑間点の解明
- 疑問1 人口(行政人口)は230,000人(2024)から146,000人(2060)まで減少するという国の機関の予測があるが、佐世保市の予測は202,000人(2060)となっており、人口減少が水需要予測に適切に反映されていないのではないか。
- 疑問2 水需要が増加する前提として、1人1日あたりの水道使用量が193リットルから211リットルまで増えるとしていることは不合理ではないか。
- 疑問3 水需要が増加する前提として、負荷率が89.4%(2018)から80.3%(2029)まで下がると設定されていることは、節水機器の普及で負荷率が90%程度となっている全国的な傾向を無視していて、不合理なのではないか。
- 疑問4 水需要が増加する前提として、将来的に有収率が低いままとされていることは、管路の適切な維持管理という観点から不適切なのではないか。
- 疑問5 計画上の工業用水の使用量の年間ピーク(計画一日最大給水量)の算定にあたって、ハウステンボス(中水道や地下水も利用している)と大口造船企業について特別な負荷率を設定していることは合理的か。
- 疑問6 石木ダムの効果について、佐世保市は、「佐世保市の慢性的な水不足問題が抜本的に改善される」と説明するが、10年に1度程度の渇水に対応する水源はすでにあるから、説明は誤りではないか。
- 疑問7 石木ダムは、1978年や1994年のような異常渇水時には貯水量が著しく低下し、水源として機能しないのではないか。
- 疑問8 佐世保市は、保有水源のうち、慣行水利権の3施設(三本木取水場、四条橋取水場、岡本貯水池)を「不安定水源」として保有水源から除外し、「石木ダムが必要」としている。しかし、これら慣行水利権は、河川法に基づく取水の許可申請行為を要することなく、許可を受けたものとみなされており、実態的にも過去の実績をみると、慣行水利権の3施設からは安定的に取水できており、これを「不安定水源」と評価して除外するのは誤りではないか。
- 疑問9 慣行水利権の3施設は、佐世保市が「安定水源」とする許可水利権と相互に補完しあって佐世保市の水道を支えており、これを放棄する計画は、佐世保市の水道システムを崩壊させてしまうのではないか。
- 水道事業の経営は維持できるか
給水人口は減少し、生活用原単位も上がらなければ,料金収入が減少するから、新規水源を開発しなくても、料金の値上げ(物価上昇や既存の施設の維持管理も含めて)をせざるをえなくなる。新規水源を開発し、石木ダムや導水施設等を新設することは、経営的に不可能ではないか。
地質:地盤の適格性の検討は十分か?
- 石木ダム同辺の地盤は水を通しやすく(高い透水性)ため、遮水対策に膨大なコストが必要であると考えられるが、これらのコストは事業費に適正に見積もられているか。
- 石木ダム周辺の地盤は水を通しやすく(高い透水性)、また、同辺の地下水位がダムの常時満水位より低いことから、ダムに流入した水が漏れてしまい、水道利用のための水が貯まらない可能性があるのではないか。仮に貯水池周辺全体において漏水対策を行えば、莫大なコストを要することとなる。
環境:環境への影響についてきちんと調査され、配慮されているか?
- 環境影響評価(以下アセス)の手続きにおいて、住民への説明や公聴会の開催が十分に行われてきたか。
- アセスの手続きに関する資料(各報告書、委員会の議事録、県知事や住民の意見書等)の情報公開は十分か。
- アセスの結果を踏まえた環境保全措置は十分といえるか。
- 工事中に生じた住民の環境保全に関する意見・不安などに対する県の対応はきちんとなされているか。
費用対効果(B/C):事業費にみあうだけの便益があるのか?
- 事業費増額や工期延長によってもダムの便益(Benefit)が費用(Cost)を上回ることができるのか
- ダムの便益を算定する前提となる洪水被害想定は、河川改修が進んでいない昭和50年の河川状態ではダムの便益が過大となる恐れがある。すでに河川改修が終了している現在の河川状況(粗度係数も変化している可能性あり)のもとで明確に算定するべきではないか
- ダムの治水便益について、代表9洪水のうち、8洪水では1/100洪水であっても被害は発生せず、唯―被害が発生する昭和42年7月洪水による被害想定だけで算定することは適正か
- ダムの水道便益の算定において、令和8年の給水制限の日数を年間293日と想定し、以降50年間毎年同等の被害が発生することを想定していることは合理的であるか
地元の同意:住民の尊厳は尊重されているか?
- 地元の同意を得られない状況が長年にわたり続いているが、その原因は何か。知事と地元の間で結ばれた「覚書」に違反した強制測量や強制収用など、県の手続の進め方は、地元の理解を得るに適切なものであったか。
6つの論点
第3回にわたる「石木ダムの技術的な疑問等に対する説明会」での質疑をふまえ、知事が出席される公開の会議を開催され、以下の論点1~6について、知事が市民委員会に対し見解を説明してください。
- 気候変動の影響を考慮して治水計画を見直す必要がないか。
- 川棚川流域における実測データを重視し、また、あるべき実測データが存在しないことを考慮して治水計画を見直す必要がないか。
- 石木ダムが川棚川本川の洪水量を増加させるおそれを考慮して計画を見直す必要がないか。
- 治水計画が前提とする雨量(計画規模1/100)により発生する洪水は上流域(計画規模1/30の河道)で氾濫すること、過去50年で河川改修が進んだこと等を前提に費用便益分析を見直す必要がないか。
- ダム貯水池から漏水するおそれがあることを考慮して計画を見直す必要がないか。
- 強制測量や強制収用などの手続は「覚書」に違反しないという認識か。長年にわたり地元の理解が得られない原因をどのように分析・評価しているのか。
論点についての補足
- 気候変動の影響を踏まえた治水計画の見直し
- 県は、ダムの設計洪水流量以上の流量、設計洪水位以上の水位になれば、ダムの安全性は100%確保できないことを認めている。
- 県は、計画雨量400㎜/24hに対して、それ以上の雨が降った場合、460㎜~500㎜でダムの貯水容量は満杯になり洪水調節機能が失われることを認めている。
- このように現計画雨量以上の雨に対して石木ダムの限界や危険性を認めているのであるから、気候変動の影響を踏まえて石木ダム計画を前提とした治水計画がベストといえるのか、早急に見直すべきである。しかし、県は、川棚川の治水計画を根本的に見直すタイミングは今しかないではないかとの質問に対して、「長崎県内においては、近年の洪水流量は現基本高水流量を超えていないため見直しの必要はない」と繰り返し答弁している。
- 国交省は、気候変動を踏まえた基本高水の見直しについて、近年の洪水流量が基本高水を上回った洪水がないのなら見直しの必要性はないとは一言も言っていない。また、国交省は、県から要請があれば指導すると国会で答弁しているが、県は国交省に対し指導を要請することは考えていないと県議会で答弁している。
- 川棚川流域住民の命を守るため、気候変動の影響を重く受け止め、川棚川治水計画を速やかに見直すべきではないか、知事の見解を求めたい。
- 川棚川流域における実測データが軽視された治水計画の見直し
- 県は、計画雨量の算定において、昭和22年から川棚川流域内に存在する雨量データを使用せず佐世保雨量を用いている。
- 県は、雨量から洪水流量を計算するシミュレーションモデルについて、平成2年7月洪水での山道橋及び石木橋の流量観測を行っておらず、検証ができていないにもかかわらず、検証はできているとして洪水流量計算を行っている。
- 県は、それ以降の比較的大きな洪水である平成3年9月、令和3年8月洪水においても流量観測を行わずモデルの検証を怠っている。
- 県は、昭和42年7月洪水を基に洪水流量を計算するに際して、実際の川棚川流域での雨の降り方とまったく異なる全流域一様の雨の分布を用いている。
- 県は、洪水流量から川棚川の水位を計算するに際し、平成2年7月洪水時の洪水痕跡から算定した洪水の流れやすさの値(粗度係数)を用いているが、現在の川棚川は石木川合流点より下流では1/100対応の河道に改修済みであり、その結果、粗度係数の値も変化している。しかし県は、平成3年9月及び令和3年8月洪水において洪水痕跡調査を怠ったため、現在の河道がどの程度の洪水量を流すことができるかが不明である。
- 治水計画策定において最も尊重しなければならないのは、現地での実測による観測値である。県は、昭和50年に計画を策定して以来現在にいたるまで、雨量、流量、洪水位すべてにおいて当然行うべき観測を怠り、実存するデータを用いず川棚川治水計画を作り上げてきた。現地での実測データに基づかない治水計画によって石木ダムの必要性を訴えても地元住民の理解はとうてい得られないと考える。知事の見解を求めたい。
- ダムが川棚川洪水量を増加させるおそれ
- 石木川の流域面積は川棚川本川の約10%と小さく、河川の勾配は本川より急であることから、石木川の洪水は本川の洪水が下流に到達する前に海に流下する。ところが石木ダムができると、本来早く流下する石木川の洪水をダムが貯留し、流下を遅らせることから、本川洪水のピークを増加させるおそれが生じる。
- 県も、雨の降り方によってはそのようなおそれはあると認めている。
- ダムを造ることによって、かえって洪水量を増加させることは絶対にしてはならない。このようなおそれのあるダムをあえて建設するのか。知事の見解を求める。
- 上流での氾濫・現状の河道を前提とした費用便益分析の是正
- 石木川合流点より下流は1/100規模での改修が完了しているが、上流は1/30規模での改修がなされていることから、1/30規模より大きい洪水に対しては上流部での氾濫等を考慮して被害想定を行う必要があるが、県は上流部での氾濫の影響を考慮せずに下流部での被害想定を過大評価している。
- 県は、昭和50年当時の河道を基に被害想定を行っているため、既に1/100対応の河川改修が完了している石木川合流点より下流部において1/10,1/30,1/50規模等の洪水でも被害が発生するとして被害想定を過大評価している。
- 河川改修を踏まえた河川の現状に則してダムの便益を評価していない費用対分析結果は明らかな誤りであり、速やかに是正するべきである。知事の見解を求める。
- ダム貯水池からの漏水の恐れ
- 石木ダムサイトの地下水位は、ダムで貯める最高水位より低い。ダムサイト部分ではダム下流に漏水しないようにダムサイト直下地中にコンクリートの壁(カーテングラウト)を作ることとしている。
- ダム貯水池のダムサイト以外の部分についても、貯水池周辺の地下水位が、ダムで貯める最高水位より低いと貯水池から周辺に漏水する。
- 九州農政局の大蘇(おおそ)ダムはこのような漏水が発生し、莫大な対策費と工期を費やしたが、未だに漏水は継続している。
- 石木ダムも大蘇ダムと同様なことにならないかと問うたところ、県は貯水池周辺を歩いて見たところ地下水位はダム貯水池最高水位より高いと説明しているが、本当にすべての地点で地下水位が高いのか確証がない。
- 仮に試験湛水時において漏水が発生すれば、大蘇ダムの二の舞であり大問題となる。
- ダム貯水池からの漏水の懸念について、知事はどこまで確認され、懸念が払しょくされていると判断されているのか、見解を求める。
- 地元の理解
- 1972年に県と地元で交わされた「覚書」では、石木ダム建設は地元の「書面による同意を受けた後着手する」ことが約束されている。
- しかし、県は、「書面による同意」を得ないまま、1982年に機動隊をいれて強制測量を実施し、強制収用手続をすすめ、一方的に建設工事を進めている。
- 県は「8割を超える住民の同意」を得たというが、約束に違反して計画をすすめる県に失望して移転を余儀なくされた住民もいるのではないか。
- 約束違反により信頼が失われているという認識があるか、失われた信頼をどのように回復するのか。